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七夕に短冊を飾り、ひな祭りに甘酒を飲む——アメリカで「和の季節」を次の世代へ渡すひとたち

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「また集まれる」——コロナ後の初めての餅つき

2023年の年明け、ロサンゼルス郊外のガーデナ市にある日系文化センターに、久しぶりの賑わいが戻ってきた。餅つき大会だ。

子どもたちが大きな杵を持ち上げ、大人たちが「よいしょ、よいしょ」と声をかける。つきたての餅をあんこやきな粉で丸めながら、参加者たちの顔には、マスク越しにも伝わる笑顔があった。

「2020年と2021年はオンラインでの『バーチャル餅つき』を試みたんですが、やっぱり限界がありましたね」と話すのは、イベントを長年企画してきたスタッフのアキコ・ワタナベさん(56歳)。「画面越しに見ていた子どもたちが、今年初めてリアルで参加して、すごく嬉しそうで。それを見て、こっちが泣きそうになりました」

コロナが変えたもの、変えなかったもの

パンデミックは、全米の日系コミュニティにとって、文化行事のあり方を根本から問い直す機会となった。集まることが難しくなった3年間、各地のコミュニティは知恵を絞った。

サンフランシスコのジャパンタウンでは、ひな祭りの雛人形展示をオンラインで公開。シカゴの日系文化センターは、七夕の短冊をSNSで募集し、デジタル上の「笹の葉」に飾るという試みを行った。ニューヨークの日本クラブは、お正月の新年会をZoomで開催し、画面越しに鏡餅を飾る参加者たちをつないだ。

「デジタルの工夫によって、むしろ遠くに住んでいる人たちが参加しやすくなった、という面もあった」と語るのは、テキサス州ダラスの日系コミュニティグループを運営するヒロシ・ミヤモトさん(48歳)。「普段は車で1時間かかる場所に住んでいる家族が、オンラインで参加してくれるようになって。コロナが終わっても、ハイブリッド形式は続けています」

「なぜ短冊を飾るの?」——子どもたちの問いが、大人を鍛える

行事を次世代に伝えることは、どのコミュニティにとっても共通の課題だ。特に、アメリカで生まれ育った子どもたちに「なぜこの行事をするのか」を伝えることは、思いのほか難しい。

シアトルで日本語補習校の教師を務めるユミコ・オオシロさん(43歳)は、毎年七夕の授業で子どもたちに短冊を書かせる。

「『なんで笹に飾るの?』『織姫と彦星って誰?』って必ず聞かれる。最初は『日本の伝統だから』で済ませようとしていたんですが、それじゃ子どもたちには響かない。神話の背景から、星の話、願いを込めることの意味まで、ちゃんと説明するようになりました」

そうした「説明する努力」が、逆に行事の本質を伝える力を強化している、とオオシロさんは言う。「日本にいたら当たり前すぎて説明しないことを、アメリカで改めて言語化することで、私自身も文化の意味を深く理解できた気がします」

地元アメリカ人との「共文化体験」が広がる

近年、注目されているのが、日系コミュニティの行事に地元のアメリカ人が積極的に参加するようになってきた動きだ。

ポートランドの日系文化センターが毎年開催するひな祭りイベントには、ここ数年で参加者の約4割が非日系のアメリカ人になったという。雛人形の飾り方を体験するワークショップや、抹茶と和菓子を楽しむコーナーが特に人気で、「インスタ映え」を目的に訪れる若者も少なくない。

「最初は『観光客的な参加』だったのが、毎年来るうちに文化を理解してくれるようになる人も出てきた」とセンタースタッフのレイコ・フジタさん(51歳)は話す。「ひな祭りを通じて、日本の家族観や女の子への願いという文化的背景を知ってくれると、こちらも嬉しい」

ハワイでは、日系コミュニティのお正月行事が地元の多文化フェスティバルに組み込まれ、フラダンスや韓国の伝統舞踊と並んで披露されるケースも増えている。文化の「見せ合い」が、相互理解の入口になっているのだ。

「伝えたい」という気持ちが、形を変えながら続いていく

ロサンゼルスで3世として育ったトモコ・ハヤシさん(38歳)は、自分の子どもに日本の季節行事を伝えようと、数年前から自宅でお正月の「おせち作り」を始めた。

「私自身、祖母から少しだけ習ったことがある。でも、レシピも意味もほとんど知らなかった。だから今は、YouTubeで調べながら、日本にいる親戚にビデオ電話で教えてもらいながら作っています」

彼女の10歳の娘は、黒豆を煮る工程を手伝いながら「これを食べると健康になるんだよね」と話すようになったという。「完璧じゃなくていい。少しでも形として残れば、それでいいと思っています」

コミュニティセンターの大きなイベントから、家庭のキッチンでの小さな営みまで。アメリカの日系コミュニティが守り続ける季節行事は、その「形」を少しずつ変えながら、確かに次の世代へと手渡されている。

太平洋を渡ってきた文化が、アメリカの土の上で根を張り、新しい葉を広げていく——その静かで力強い営みは、今日もどこかの街で続いている。

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