日刊スポーツ九州トップ > ソフトバンクホークストップ > 杉内9K復活劇で開幕4連勝
【おすすめ】オープン戦勝敗予想クイズ開催!
05年3月30日
地獄を味わった男が帰ってきた。ソフトバンク杉内俊哉投手(24)が楽天戦(福岡ドーム)に先発。8回5安打2失点、9奪三振の好投で、チームに02年以来の開幕4連勝をもたらした。昨年6月1日のロッテ戦(福岡ドーム)、KOされた後に自らベンチに両手を殴打し骨折。精神的にタフになった左腕が昨年5月18日(近鉄戦)以来、実に315日ぶりに白星を手にした。ライバル西武が敗れ、チームも唯一無キズの単独首位。連勝街道は止まりそうもない。
長いトンネルを抜けた喜びは、トンネルに入り込んだ場所で味わった。最後の打者ロペスが遊飛に倒れると、杉内はベンチで白い歯をこぼした。「今日の勝ちは素直にうれしいです。チームも連勝中だったし、流れを止めたくなかった。とにかく今日は絶対に勝ちたかった」。大事な両手は今度はベンチではなく、チームメートとのハイタッチに使った。
「もう2度と思い出したくありません」。
昨年の6月1日ロッテ戦。ふがいない投球内容に怒りが収まらず、両手をベンチに殴打。最終戦には間に合ったが、チームはプレーオフ敗退。先発登板予定だった日本シリーズも泡と消えた。
悔しい思いはそれだけではない。食事を取るのに、えりか夫人(24)に手伝ってもらったこともある。罰金は破格の600万円だった。斉藤、新垣、和田と並び「先発4本柱」と期待され、復活を期した今季も、オープン戦序盤は苦しんだ。走者に走られ放題。約束されていた開幕ローテ入りも1度は白紙に戻された。後輩の馬原に先を越され、任されたのは開幕4戦目。「(骨折してから)とにかくつらい思いばかりだった。チーム、ファンに迷惑をかけた。今年は借りを返さないといけない」。301日ぶりに立った、先発マウンドで燃えないはずがなかった。
2度リードされたものの、2回から4回まではパーフェクト投球。6回2死からは4者連続三振と、奪三振ショーを繰り広げた。最速142キロの直球と、縦に大きく割れるカーブ、キレのあるスライダーで8回を投げ、5安打9奪三振2失点。1点を勝ち越された直後、5回表2死一塁では一塁走者の飯田をけん制で仕留めた。冷静さを忘れない杉内がいた。「味方が逆転し、少し気分が楽になった。攻めの投球ができた」。今年から1勝につき10万円を愛基金に寄付することにしているが、今季初登板で公約を果たした。
03年秋の日本シリーズで2勝を挙げ、MVPに輝いた登板のビデオを見る日々を繰り返した。最高の舞台で力投する姿を頭にたたきこんだ。勝つとグラブを替えない験担ぎも、今季はやめた。自分を変えたかった。
杉内の好投で、チームは02年以来の開幕連勝を「4」に伸ばした。この日、西武が敗れ、4戦目を終えて早くも単独首位に躍り出た。王監督は「トップとかはオールスターが終わってからでいいんだよ」と話すものの、表情は緩みっぱなしだ。「まだまだこれで恩返しとは言えません。今年1年、頑張らないとね」(杉内)。背番号「47」の恩返しとは、もちろん、チームを日本一に導くことだ。【石田泰隆】
◆杉内のシーズン初登板試合 新人の02年から4年連続で、シーズン初登板した試合で勝利投手となった。02年は4月1日のロッテ戦で6回0/3を投げ、4安打1失点。03年は3月30日のロッテ戦で散発4安打の完封勝利。04年は3月29日の西武戦で6回0/3を投げ、4安打5失点で勝った。03年の完封勝ちは、チームの完封一番乗り。
◆杉内のベンチ殴打VTR 04年6月1日のロッテ戦で先発した杉内は、2回を終えて7安打7失点の大乱調。一塁側ベンチ内のイスを殴り、両手小指を骨折した。8月12日にブルペン投球を開始。9月23日の日本ハム戦で中継ぎとして戦列復帰し、3回1/3を投げて1失点。10月上旬の西武とのプレーオフでは3試合に救援登板した。
ソフトバンク斉藤投手コーチ(今季初勝利を挙げた先発杉内について)「初回以外はリズム良く投げられていた。緩急もうまく使っていた。(8回の交代は)球数もあるし、いい感じで終われば次につながる」
写真=ソフトバンク対楽天 <2> 両手骨折後、初のマウンドで初勝利を挙げた杉内は笑顔でお立ち台に立つ(撮影・進尚幸)